コンテンツ
縦置きパワートレインで幅広いラインアップを実現したCX-60 マツダがマルチソリューションでEV化を進める理由

PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)を始め4つのモデルを有することで話題のCX-60。ここまで幅広いラインアップにした背景には、マツダが電動化に向けて進めるマルチソリューション戦略がありました。今回はマツダ コーポレートコミュニケーション本部の藤谷さんと、R&D戦略企画本部の山本さんに、CX-60の開発背景とマルチソリューションの詳細、そしてカーボンニュートラルに向けた課題などについて話を聞きました。
縦置きパワートレインを採用した、クロスオーバーSUV

CX-60は新開発のプラットフォームを採用し、パワートレインを縦置きにレイアウトしたまったく新しいクロスオーバーSUVです。PHEVやMHEV(Mild Hybrid Electric Vehicle)といったマルチパワートレインによる気持ちの良い走りに加え、最新の環境・安全性能にもこだわっています。新たに搭載されたドライバー異常時対応システム(DEA)は、乗車した瞬間からドライバーをモニタリング。急病や意識喪失などにより運転不能になった際、クルマが自動的に減速・停車させることで、重大事故の回避や事故被害の軽減に寄与します。
また、エクステリアはマツダのデザイン理念である「魂動(こどう)デザイン」を継承した力強くエレガントなものになっています。インテリアも上質な素材を使い、高い質感を追求しました。 今回のイベントで展示したPHEVモデルは、パワフルな加速で国産PHEVの中でも高い評価をいただいています。
CX-60で幅広いラインアップを展開した理由

マツダは2030年に自社のグローバルにおけるEVの販売比率が25%~40%になるという想定で電動化の準備を進めています。しかしながら新興国と先進国ではエネルギー事情やインフラの状況、お客さまのニーズが異なります。そのため、さまざまな技術を普及させていく「マルチソリューション」の考え方で取り組みを進めています。CX-60にガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、PHEV、MHEVと幅広いラインアップを展開した理由も、この考えにもとづいたものです。
PHEVモデルについては、ウィークデーの通勤や買い物はEVモードで、週末の遠出はハイブリッドで、と走行可能距離を気にすることなく走りたいという欲ばりなお客様のニーズを満たすために開発しました。スポーツカー顔負けの走りからEVとしてのクリーンな走りまで、TPOや気分に合わせてマルチな使い方ができるところが大きな魅力です。急速充電や外部給電にも対応していますので、お客さまのカーライフをますます広げてくれる存在になると自負しています。
実際にPHEVモデルを購入されたお客さまからは、「コロナ禍で国内旅行をするようになったのですが、訪れた奈良で野生の鹿がとても大切にされているのを見て、このような場所では排気ガスを出さないクルマのほうが良いと感じました。しかしクルマで遠出したい人にとってEVという選択肢はインフラや走行距離を考えると非常に難しいのが現実です。ですがPHEVならガソリンで走りたい時と電気で走りたい時を分けられ、自然に対する考えや思いを走り方にも反映できるところが素晴らしいと感じました」という貴重なご意見をいただいています。
カーボンニュートラル燃料で目指す、既存車のCO2削減
マツダはスーパー耐久シリーズに、カーボンニュートラル燃料を使って参戦しました。カーボンニュートラル燃料は、燃焼段階ではCO2を排出しますが、植物による光合成や工業的な合成により大気中のCO2を回収して作られるため、燃料を使用した際に発生するCO2の排出量を実質的にプラスマイナスゼロにできます。また、車両のエンジンのハードウェアを変更することなく使用できるという大きな利点があります。
EVはCO2ゼロで走れますが、現在走っているガソリン車やディーゼル車はそうではありません。マツダでは新たに販売されるクルマだけではなく、既存のクルマが排出するCO2も削減していくことが大切だと考え、カーボンニュートラル燃料の普及拡大に向けた実証実験にも注力しています。こちらもまた、マツダが電動化に向けて取り組むマルチソリューションのひとつです。
今後も燃料開発への協力はもちろん、内燃機関と電動化技術の組み合わせで、究極まで無駄をなくす研究開発を進めていく方針です。
動力源が変わっても、人とクルマが心を通わせる相棒であれるように

BEV(Battery Electric Vehicle)の普及を進めるに当たり、現時点で大きな課題は3つあると考えています。ひとつは、すべてのクルマをBEV化するだけの資源が現段階では足りていないこと。そして、それに伴いバッテリーが依然として高価で誰もが購入できる車両価格になりにくいこと。また、充電器などのインフラが脆弱で、BEVの普及が進むとインフラの問題が顕在化してくることです。
これらの課題を解決するには、クルマ側とインフラ側、それぞれでやらなければならないことがあり、長い時間をかけた社会全体での変化が必要になります。したがって、その移行期間もどのようにCO2を減らしていくのかを考えたときに、さまざまな技術的選択肢をもって一歩一歩着実にCO2を減らしていくことが重要なのです。
カーボンニュートラルは、人々が永続的に幸せに生きていくための手段です。
近年、カーボンニュートラル=EV化が目的のように論じられることが多くありますが、マツダはそうは考えていません。人々が永続的に充実して前向きに生きていけるようになることこそが私たちの目的で、そのためにクルマが人々の人生にどう関われるかが重要だと考えています。私たちはクルマの動力源がどのようになっても、人とクルマが心を通わせる相棒のような存在になれると思っていますし、そのようなクルマ作りを愚直に進めていきたいと考えています。